ぶんがくん

第12回 太宰治『斜陽』


■放送日時:'94年7月19日 (火) 24:40
■文學ノ予告人:森本レオ
■Cast:
かず子:緒川たまき
母:大川栄子
直治:浅見真公人
上原:小木茂光
■予告編でのキャッチコピー:
恋はあまりにも、革命だった。
戦後最初のベストセラー!!太宰文学の集大成!!

■名科白集:
おむすびが、どうしておいしいのだか、知っていますか。あれはね、人間の指で 握りしめて作るからですよ。

私、不良が好きなの。それも、札つきの不良が、すきなの。そうして私も、札つ きの不良になりたいの。そうするよりほかに、私の生きかたが、無いような気が するの。

いまの世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です。

生きていたい人だけは、生きるがよい。人間には生きる権利があるのと同様に、死ねる権利もある筈です。

革命は、いったい、どこで行われているのでしょう。

すくなくとも、私たちの身のまわりに於いては、古い道徳はやっぱりそのまま、みじんも変らず、私たちの行く手をさえぎっています。

海の表面の波は何やら騒いでいても、騒いでいても、その底の海水は、革命どころか、みじろごもせず、狸寝入りで寝そべっているんですもの。

人間は、嘘をつく時には、必ず、まじめな顔をしているものである。この頃の、指導者たちの、あの、まじめさ。ぷ!

■名場面:
―かず子が上原と飲み屋で会い、その帰りに接吻する場面。
―直治の遺書。

■登場人物ノ紹介:
・かず子。
 華族の家の長女で29歳。愛のない結婚をして死産、実家に戻る。▼母と二人の 生活のために伊豆に移り住み、畑仕事に精を出す。▼弟直治が尊敬する小説家上 原に魅力を感じ、社会主義の本も読む。▼母の死後、上京して革命的な恋へ一歩 踏み出す。

・母。
 優雅な手つきでスウプを飲む、日本で最後の貴婦人。▼夫を亡くした後、兄の 和田の叔父さまの言うことには逆らわない。▼裁縫が得意で読書は19世紀西洋の 小説。かず子の再婚を気にする。▼たびたび高熱を発し、体の不調を訴える。診 断の結果は結核。

・直治。
 かず子の弟。学生時代から文学、社会主義、麻薬にのめり込む。▼作家上原を 尊敬し、人生の指針としている。▼かず子が上原に会いに上京した日伊豆の家で 自殺し、遺書を残す。

・上原。
 流行作家。そのデカダンな行状は文壇のみならず、広く知れ渡る。▼直治の生 活費を届けに来たかず子の唇を奪う。▼だが、その後かず子からの熱烈な手紙を 無視し続ける。
■作品ノ解説:
・斜陽。
 「斜陽」は昭和22年『新潮』に連載。単行本はベストセラーに。▼「斜陽族」という言葉が流行するほどの人気だった。▼ロシアの文豪チエホフの「桜の園」を目指して書いたと言われる。▼かず子のモデルは太田静子。太宰との間には子供が生まれていた。▼そうした実体験もこの作品のもとになっている。

■解説の先生:
 「解説の先生」は妙な「ざます言葉」を駆使する先生。なんでも接頭語「お」を付けてしまう。
■今週ノ問題:
太宰治「斜陽」本文ノ中ニ、平仮名ノ「お」ハイクツアルカ?

■使用された音楽

使用された場面 予告編
アーティスト コシミハル
曲名 「アヴェ・マリア」
収録アルバム 『ボーイ・ソプラノ』             
メーカー・型番 テイチク / Non-STANDARD [30CH-160]
(現在は型番が変更されている)

使用された場面 名場面
アーティスト 坂本龍一
曲名 「The Sheltering Sky -Theme- (Piano Version)」
収録アルバム 『ベスト・オブ・坂本龍一 サウンドトラックス』
メーカー・型番 東芝EMI / Virgin [VJCP-3111]

■メモ
 この回、冒頭を録画し損ない、おまけにテープの調子が悪く音声が変になってしまった(と思っていたのだが、どうも放送事故のようである。CM 入りのタイミングも何かずれてるし、ちょっと変)。あんまり太宰治は好きではないので、別に悔しくはないが、やはり完全なものが欲しいというのは人情だろう (笑)。
 ちなみにこの回、上原役を演じていた小木茂光は、ドラマ「Night Head」で霧原兄弟と対決し、「力」を武器にして2人をつぶそうともくろむ悪人の役をしていた。なんか見たことあるなと思ったっす :-)。

Special thanks to ken-1@rr.iij4u.or.jp


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