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オールナイト「東映カルトBIG2 石井輝男vs牧口雄二」@新文芸坐

江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間/徳川いれずみ師・責め地獄/徳川女刑罰絵巻・牛裂きの刑/女獄門帖〜引き裂かれた尼僧


 ちょうど今、自由が丘武蔵野館でレイトショウで石井輝男特集をやっていて、ちょっと最近のブームをねらってるフシもあるかな?と思いつつも、コアな番組でがんばってるなあと思っていた (もちろん見に通っていた) 矢先にこうくるとは。各々1本ずつでも狂ってる映画を一晩に4本も上映するのはまともな神経ではないというか蛮勇というか、加えてこれを嬉々として見に行く連中 (自分も含めて) もまあ気違いに近いといっていいだろう。ところが最近の世の中にはいかれたやつが多くて、上映開始1時間30分前から並んで待っている人はいるし、けっして狭くはない新文芸坐でパイプいすの補助席が埋まるくらいの混雑ぶりに驚いてしまった。

 映画のあらすじや感想は各々のページに譲るとして、このようなかなりまれなオールナイトをざっと振り返ると、1.観客のほとんどは男性、2.比較的静か、3.フィルム一巻飛ばすなよゴルァ――といったところだろうか。

 1.はまあ言ってしまえばとうぜんの話で、このラインナップで女性客が7割だったらちょっとナニかも (それはそれでおもしろいけど)。女性はいても男性と同伴というパターンがほとんどで、これはこれでまたこんな際物オールナイトにどうやって誘うのか、という点で興味深いところではある。

男:オールナイト見に行かない?
女:何の映画?
男:んーとね、「徳川女刑罰絵巻・牛裂きの刑」とか「徳川いれずみ師・責め地獄」なんか。
女:ホント? 行く行く!

 まさかこんな会話が交わされているとはとうてい思えないけど、休憩時間にさほど関心のなさそうな同行の女性にいろいろ説明をしているマニアライクな男性もいたので、それぞれにそれなりの興味の方向があることがわかったのはおもしろかった。

 2.の比較的静か、ってのは石井輝男の映画は笑うもんだと思って、なんてことはないところでも無理に笑う人 (というか最初から笑ってやろうと意気込んでくる人) が最近増えてきてちょっとナニな感じもしていたが、このオールナイトにはそういう人はいなかった。逆に笑いどころでも静かだったから客層がちょっと違ったのかもしれない。

 で、いちばん問題なのが3。『女獄門帖〜引き裂かれた尼僧』で、成瀬正扮する同心が尼寺に泊まるところからフィルムが飛んでいきなり最後の乱闘シーンに。はじめてこの映画見る人はなにがなんだか訳が分からなかったんじゃないかな。あ、でも『徳川いれずみ師・責め地獄』見た後だったらこんなもんかと思うかもしれないか (苦笑)。だいたい、時間が押していたはずなのになぜか終映時間が早まっているのに劇場側もおかしいと思わないののも変だ。説明の館内アナウンスもないし。でもまあ、これだけのタイトルを一気に見られるチャンスはそうそうないんで、まあこれからもおもしろい番組を組んでもらいたいなあ、ってところで。


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