le cinema - あらすじと感想文


徳川いれずみ師・責め地獄

1969年 東映京都 / 監督:石井輝男 / 出演:吉田輝男・小池朝雄・橘ますみ


 『網走番外地』を作ってきたヒットメーカー・石井輝男監督が放つ東映「異常性愛路線」の燦然と輝く代表作。とにかくすべてにおいてサーヴィス過剰な作品。オープニングから悲鳴と血しぶき満載で、タイトルバックには生きたまま首を鋸引きされる囚人たちが映る。首を引いて血が吹き出る瞬間にストップモーション、さらに首が切れる瞬間にストップモーションをかけるという丁寧さ。

 冒頭、女郎が墓場荒らしをし、死体の腹を割き、鍵を盗む。「これで女に戻れる」と言って、着物の裾をからげてみれば股間には貞操帯が (館内忍び笑い)。貞操帯に鍵を差し込み、これで晴れて自由の身 (何の?) となると思いきや、鍵がぽっきり折れてしまう。「どうすればいいの!」との叫びとともに館内は爆笑。この女郎、親の残した借金返済のため、悪徳与力の紹介で大黒屋に奉公することになるのだが、この大黒屋は、女に刺青を施してその手のマニア向けに展開する売春宿で、刺青を施された女たちが日夜責められているようなところ。大黒屋のセットは、覗き窓が仕掛けられた変形の小部屋、長い迷路のような廊下、責め部屋は床や天井がガラス張りになっているなど、ほんとうに金も手間もかかっている。

 さて、その新入りの女郎ももちろん刺青を入れられることになる。妙に芸術家肌で紳士的な彫り師・吉田輝雄は、その女郎の肌の綺麗さに惚れ込み、ある特殊な刺青を施す。吉田輝雄をライバル視している兄弟子・小池朝雄は、将軍主催の刺青合戦に勝つべく彫りまくる。刺青合戦では小池朝雄のサイケデリックな刺青が優勝するが、吉田輝雄が「女に酒を飲ませてください」と殿様に訴え、女郎に酒を飲ませると、なんと肌の下から刺青が浮き上がり、一同感嘆。でも元からあった刺青はなぜか消えてしまうのは摩訶不思議。

 その女郎は大黒屋の女将に気に入られ、レズビアンの相手をさせられたりするが、大黒屋の下働きの男に犯されてしまう。逆上した女将は下働きの男を折檻、その妹の目をつぶし、女郎に貞操帯をかける。下働きの男は、貞操帯の鍵を奪い、飲み込んでしまい、怒り狂った女将は下働きの男を撲殺してしまう。ここで、冒頭の「墓場で貞操帯」のシーンにつながるわけだ。しかし、死体損壊罪で女郎は捕まってしまい、「あれ、この女郎って主人公じゃないの?」と思う間もなく、海上火炙りの刑であっさり処刑されてしまう。あらら。

 その後、大黒屋の女将と小池朝雄にはめられて、吉田輝雄は無実の罪で佐渡送りになる。この後、いろんな女たちの刺青裸満載、虐待・拷問満載、悲鳴満載だが、中には笑えるシーンも点在している。女囚たちが入れ墨を彫られて大黒屋の手引きで長崎の変態外人に売り飛ばされるくだりでは、なぜか由利徹と大泉晃が女囚で、胸毛丸出しでレズったりする。二人の声はなぜかオバQみたいな声に吹き替えられている。長崎に連れてこられたお鈴が、件のめくらにさせられた娘と、支那人の葬式にまぎれて逃げるシーンでは、棺桶に隠れていためくらの娘を死体が生き返ったと勘違いして、支那人たちが腰を抜かしておびえまくるシーンもかなりおかしい。この長崎のアジア的な迷路のような町並みのシーンは、途中挿入される犬鍋屋と相俟って (笑)、猥雑とした雰囲気がとてもよく描けている。

 とにかくいろいろエピソードが山盛りで、最後に一番悪い大黒屋の女将は人身売買の罪で捕らえられ、空中股裂きの刑で処刑される。「ぎゃーっ」という悲鳴とともに股がまっぷたつに裂けて、鮮血と内蔵が空中にばらまかれたところでストップモーションになり「完」の文字、唖然とする観客たち。最後まで異常で妖しいパワーが貫かれる一本、ビデオも出ていることだし必見。


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