宮崎駿

 『風立ちぬ』公開でいろいろ盛り上っていているなかで,「子供が退屈した。ジブリらしくない」「ストーリーがない」などというレビューがわりとよく見かけられるけど,なにをいまさらと思う。

 宮崎駿の描きたいことは,昔から「1に飛行機(やらメカニック)と空,2に皺々の婆さん(マザコン)[★],3が美少女(ロリコン)」で,その他はわりとどうでもいいと思っているふしが強い。本人が「(子供マーケットを無視して)道楽で作った(いまは反省している)」と言っている『紅の豚』は最高傑作だと思うが,特に話に起承転結があるわけでなし,皺々婆さん大活躍の『千と千尋…』も後半部分はぐだぐだになってしまうし,トトロにいたっては話の盛りあがりすらないがいずれも圧倒的な絵の力で見せてしまう。

 もちろん,商業上の要請でファミリー向けに制作せざるを得ないのは百も承知だが,愛車がシトロエンの2CVでチェリーが好きだったたばこ呑みの宮崎駿は,ワンボックスカーや軽自動車に乗り,たばこを吸う旦那がベランダに追いやられているファミリー層と元来食い合せが悪いんだろう。

★ 宮崎作品では,爺さんや壮年の男性,妙齢の女性があっさりした描写であることが多いのに比べて,とにかく皺くちゃの婆さんがよく登場する。『千と千尋…』にはじまって,『ハウル…』の荒地の魔女やら,『天空の城ラピュタ』の空中海賊のボス,『紅の豚』でピッコロ社に手伝いに来る婆さんたち――。どの婆さんもいきいきとして,描き手の思い入れがよく伝わってくる。