[05-11-1995]琉球・台湾 #6‐与那国島

再び「どなん」の工場に行く。もちろん出来たばかりの泡盛が目当てだ。飲ませてもらい,60度の泡盛を購入する。宿に戻り,空港まで送ってもらうように依頼する。午後便を予約していたのだが,午前便に計画を変更したため早い目に空港に行ってフライトを変更してもらうためだ。車中,石垣で山羊汁を食べた旨の話をすると「へえ,山羊汁を食べたんですか。山羊汁を」と何度も意外そうに言われた。与那国の人は意外と山羊汁を食べないのかもしれない。

空港に到着したが,まだカウンタも開いていなかった。空港といっても規模も小さくまったくのんびりしたところで,空港職員もそれらしからぬ雰囲気。手続が始まったので便の変更を申し出ると,座席に余裕があるとのことで簡単に変更できた。座席表を見ながら希望の座席を指定し,その位置にあるシールを職員が搭乗券に貼る,というまるで20年前にもどったかのような予約手続だった。待合室で時間をつぶしていると,テレビで沖縄県の広報番組が始まった。これも話題は沖縄県民の反米反基地総決起集会の模様で,およそ自治体の広報番組らしからぬポリティカルなものだった。制服の女子学生や当時の太田沖縄県知事,産業界からも代表が出て,政治的な立場を超越しておのおの「反米・反基地」を訴えていた。

「与那国島の天候が不順のため,上空で旋回したまま着陸が遅れている。下手をすると石垣に引き返してしまうかもしれない」とのアナウンスが流れ,待合室がどよめく。ここで遅れてしまうと後々の予定が大幅に狂ってしまう。不安が走るが,ままよと座って待機していると着陸するとのアナウンスがあり安堵が広がった。搭乗手続が開始し,雨の中YS-11型機に向かう。待合室からは徒歩連絡なので,南西航空のマークが書かれた傘を差して歩いていく。

フェリーと違い,石垣空港まではわずかな時間で到着した。空港からはふたたび離島桟橋までもどり,小浜島行きの高速船に乗船する。本来は西表島に渡って宿泊する計画だったのだが,宿が取れず午後の時間を小浜島観光に充てることにした。小浜島はヤマハ(※)のリゾート施設「はいむるぶし」があり,ダイビングをする人であればマンタを目撃できる海域として知名度が高いと思う。
※ヤマハはリゾート事業から撤退し,はいむるぶしは三井不動産に売却された。

雨が降り続く小浜島に上陸し,とりあえず御嶽めぐりをしていると,遠くで囃が聞こえてくる。狸囃子じゃなかろうかと思って音のする方向に歩くと,化粧をして派手な鳥のような衣装をつけた女の子がやってきたので尋ねると,やはりお祭りらしい。そこで,場所を聞いて会場となっている御嶽に着くと,雨の中テントを張った下で,囃子に合わせて舞を踊っており,その前にはござの上に座った紋付き袴の男性たちがやんやと手拍子を送っている。よく見ると,彼らのかたわらには例の「どなん」の一升瓶がごろごろ転がっている。一方,女性たちは普段着で集会場とおぼしき小屋の軒下に座っている。いろいろな舞を舞ったり,芝居めいたことをしたり,どうやら南北ふたつの部落がたがいに芸能を奉納しているらしい。囃子は雅楽っぽいメロディに三線がからむものやら,三線メインのものやら種類がいろいろあり,なかなかおもしろい。

結願祭全景1
結願祭全景。紋付き袴の男性が舞台の正面にくる。桟敷には泡盛の瓶が転がる。雨天だからテントが張られているのかと思っていたが、毎年張られているようだ。
結願祭全景その2。
雅楽の装束のような極楽鳥の格好をして踊る舞。左手の黒い幕の後ろにお囃子がいる。
結願祭
集会所の軒下で祭を見物する女性たち。
結願祭の囃子方
囃子方。舞台の裏側にいる。

ひとくさり祭を見物し,この祭はいったいどういうものですかとそばにいた人に訪ねると,「きちぃがんさー(結願祭)ですよ」とのこと。つまり収穫を喜び神様に感謝するお祭りだ。竹富島の種子取祭が1週間違いで見られずに残念な思いをしていたが,偶然訪れた小浜島でなかなかよい拾い物をした。ネット上でも小浜島の結願祭についてはいろいろ書かれている。

方言の交通安全啓発看板
小浜島で見つけた交通安全啓発看板。「ヌフゥ アタラサスーカー グシヌミテ クルマ ムツゥナ」とは「命が惜しければ、酒飲んで車乗るな」の意。

さて,石垣の宿にもどると,なにやら周囲の通りが騒がしい。石垣市役所近くの新栄公園で「石垣島まつり」が行われていて,いろいろ盆踊りのようなものやら出店などもあるようだ。数日前,夜の商店街で女性たちが踊りの練習をしていたのはこれだったのか,と合点が行く。露店を冷やかしてみると,焼きそばやたこ焼き,お好み焼きといった定番の屋台にくわえ,ソーキそばやら古酒の販売といった郷土色のある屋台もあるので当然突撃だ。ソーキそばはソーキが大きく,しかも味がよい。本島で食べたものよりずっとおいしい。「飛龍」で覚えた古酒も10年ものと15年ものとが併売されており,呑み比べをさせてもらう。同じ泡盛でも5年の熟成のちがいで,かくも変わるのかと驚くほど15年ものはまろやかになっており,驚愕。宿に戻ってつまみを食べながら泡盛でも,と肴になるようなものを探していると,海亀のチャンプルーを発見。早速宿に持ち帰り,独特の食感と味を楽しみながら泡盛の杯を重ねた。