ぶんがくん
第4回 太宰治『人間失格』


■放送日時:'94年5月18日 (水) 24:50
■文學ノ予告人:鈴木清順

■Cast:
葉蔵:大沢健
堀木:古坂和仁
女給:後藤久美
ヒラメ:朝倉伸二
マダム:廣瀬恵
ヨシ子:浅野麻衣子
ツネ子:茅野佐智恵

■予告編でのキャッチコピー:
恋はあまりにも、地獄だった。
文学史上最も壮絶な魂の叫び

名科白集
恥の多い生涯を送ってきました。
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。

弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我をするんです。

あなたを見ると、たいていの女のひとは、何かしてあげたくて、たまらなくなる。
いつも、おどおどしていて、それでいて、滑稽家なんだもの。

僕は、女のいないところに行くんだ。

善悪の概念は人間が作ったものだ。人間が勝手に作った道徳の言葉だ。

いったいに、女は、男よりもよけいに快楽を頬張ることが出来るようです。

人間は、こぶしを固く握りながら笑えるものでは無い。

いまは自分には、幸福も不幸もありません。
ただ、一さいは過ぎて行きます。

名場面
◆葉蔵がツネ子と入水するまで (新潮文庫・p.60〜p.64,8行目)
◆ヨシ子が犯される場面 (p.112,9行目〜p.117,7行目)

登場人物ノ紹介
・葉蔵。
 貴族院議員をつとめる東北の名家に末っ子として生まれる。▼絶世の美青年だが、極度の人間不信。他人と関わるには「道化」しかない。▼東京の高等学校に進学するが、心中事件や非合法活動で退学。▼無頼な生活の中で、画家をめざすが三流出版社に漫画を書く。▼清純で無垢な少女・ヨシ子と出会い、結婚。新しい生活に希望を抱く。

・堀木。
 浅草の下駄屋の息子。洋画家の画塾で、葉蔵と出会う。▼葉蔵からいつも5円借りるが、態度はでかい。

・ツネ子。
 銀座のカフェの女給。床屋の夫と友に広島から夜逃げしてきた。▼夫は詐欺罪で刑務所に。人間としての営みに疲れて葉蔵と入水。

・ヨシ子。
 葉蔵が通う銀座のバアの向かいにある煙草屋の娘。17、8歳。葉蔵の内縁の妻となり、一緒に生活を始める。

作品ノ解説
人間失格。
 昭和23年、雑誌「展望」に三回に渡って連載。▼ドストエフスキーと並び称される人間の最深部に触れた作品。▼「太宰が生きているから、僕も生きる」当時の文学青年はそう語る。▼作者の体験を語ったこの作品は戦後の青年たちを特に興奮させた。▼この作品は、太宰の最後から二番目。最後の作品は「グッドバイ」。

■解説の先生:
肺病病みで暗く、ことあるごとに進行役の女性に「死のう」と迫る先生。
■今週ノ問題:
太宰治「人間失格」本文中ニ、片仮名ハ、ノベ何文字出テクルカ?

■使用された音楽:

使用された場面 予告編
アーティスト 久石譲
曲名 「Why Do The People 長い旅路の果て」
収録アルバム 『脳と心 vol.1 & 2〜THE HUMAN BRAIN & MIND
NHK スペシャル驚異の小宇宙 [人体II] サウンドトラック』
メーカー・型番 ポニーキャニオン [PCCR-00302]
使用された場面 名場面
アーティスト 細野晴臣
曲名 「Dark Side of The Star」
収録アルバム 『S.F.X』
メーカー・型番 テイチク/Non-STARNDARD [TECN-18758]

■メモ
 まだこの時分も視聴していなかった。「La Cuisine」の裏番組としてなつかしの「西遊記 (夏目雅子版) 」がテレビ大阪で再放送していたので、火曜日のほうに神経が行ってしまっていたからだろうと今にして思う。
 話自体はめっぽう暗いのだが、葉蔵を演じる大沢健の「モルヒネ中毒」の手をぶるぶると震わせる演技は絶品である。

 補足。予告編にも出る渋いたばこ屋は、カメラマンのS氏が港区の白金付近で発見したそうだ。死にそうなばあちゃんが一人で経営していて、半日1万円で店を借用したらしい。

Special Thanks To deta@ppp.bekkoame.or.jp

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