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インテリア・インタビュー
全てを統合する「中間音楽」のモデル・ミュージック
『ロックマガジン』07号 (1982年10月発行) より


I:野中英紀(インテリア)
R:ロック・マグ編集部(田中浩一)

R:野中さん、沢村さん、日向さんともボストンのバークレー音楽大学にいらっしゃったんですが、何を専攻されていたのですか?
I:みんなそれぞれ専攻は違うんですが、僕は、ギター、作曲、アレンジをやっていて、 それぞれが、作曲、アレンジ、自分の楽器なんかを勉強していました。

R:音楽大学では特に敬愛する作曲家、音楽家は誰だったんですか?ポピュラーミュージックよりもむしろ現代音楽の勉強をされたと思うんですが……。
I:バークレー音楽大学というのはジャズの為の音楽大学で、一応ジャズ理論など勉強していました。ジャズの中でも特にどれといって決めることはできませんが、4ビートのあたりかな。日向君と沢村君はボストンでカメラというバンドを結成していて、現代音楽とジャズを合わせたような、フェイクジャズ的な方向じゃなくて、ウエザー・リポートの延長のようなフュージョンから派生したバンドだったわけです。その内僕も入りたかったんですが、途中から変化して、僕も学校で勉強することはある程度限られているので、日本に戻ってきたというか。

R:アメリカでは色々なジャズ理論を勉強なさったということですが、特にロックに関してどの辺に興味をもたれましたか?
I:僕は小さい頃からロックを聴いてきたんで別にどれということもなくみんなと同じようなものを聴いていて、相当昔のものから、だいたいラジオでかかるようなメジャーなものまで聴いていました。

R:それでインテリアを結成され、ロックの世界にあらたに足を踏み入れられてどうですか?
I:まず最初に僕がアメリカから帰ってきて、ジャズへの興味を失ったことです。ちょうど向うでYMOを見て、アメリカよりもっと面白いことを日本でやってるんだなと感じて、何んとなく去年の夏ぐらいに帰ってきました。

R:僕自身、YMOは以前から好きですが、特に『BGM』、『テクノデリック』でYMOは世界次元でのバンドだと再確認したんですが、あなたも『BGM』を聴いた時、すごくショックをうけたのですか?
I:僕個人としてはそうで、帰ってきた動機もそうです。他のメンバーはそれぞれ違うと 思うんですが……。インテリア結成のもともとは日向君の紹介で僕が沢村君と会って、彼と一緒にシンセサイザーをいじって、デモ・テープにしたものを細野さん、高橋さんに聴いてもらって。そしたら気に入ってもらい、\ENからレコードを出すという運びになったんですが、その時点ではまだ2人だけのメンバーで、後から人間的に色々、大介くん、別当くんが参加してくれ、結局僕が音楽的に\ENの持っている色々なものについて非常に興味を覚えて、それがインテリアとして自然に出るようになったんです。確かにYMOをよく聴きましたが、YMOをフォローしようなんか全くなくて、ただ単にいままでやってきたことの延長として、自分の音楽的に自由なことをやりたいんですよね。

R:グループ名のインテリアには室内装飾的なインテリア、室内音楽的なインテリアとい う意味があると考えてよろしいですか?
I:僕らが思っているのではインテリアというのは本質的なとか、内存するものであるとかいう意味で、特に室内音楽とかに限定しているのではないです。

R:ジャズを勉強されたということですが、ロックにとらわれないという意味で、先日来日したイギリスのビッグバッグとかリップ・リグ+パニック、スイング・ジャズをとりいれたサブウェイ・セクト、またZEレーベルのジェームス・ホワイトとか聴いてもロックにおいてジャズはこれからも影響を及ぼすと思うのですが、その辺のロックにおけるジャズの影響はどのように考えられますか?
I:特に意識してはないんですけど、やっていることがロックの中にジャズ、4ビートをとりいれるというような明らかな形でやっていなくて、作曲でも頭で考えないでセッションやりながらつくっていくという、根本的にはインプロバイズなんですが、インプロバイズしていく中で、あるものがロック的要素、あるものがジャズ的要素になるんでしょうね。だからあまりRR+Pのような大袈裟な形でとらえていないんですが、ただ影響というか、かつてやっていたからあるんですが。

R:沢村さんのサックスは野中さんから見てどのようなものですか?
I:ジャズでもないし、ロックでもないんです。どっちかと言うと民族音楽的音色を狙っていますので。

R:例えば立花ハジメさんの音楽はジャズでもなくロックでもなく新たな形の80年代ポップ・アートだと思うんですが、そういう意味でのポップにインテリアはあてはまると思うのですが。
I:そういってもらうとありがたいんですが、ハジメさんはノン・カテゴリーとはっきり言ってますが、僕らはそこまではっきり言えないですが、あまりロックであるとかジャズであるとか考えていなくて、インテリアがやってるからたまたまそういうのになっているというものです。音楽のスタイルは考えずにやってますから。

R:野中さんはギター・シンセサイザーを担当なさっているということなんですが、日本でも数年前にクラフトワーク、ゲイリー・ニューマン、ウルトラヴォックスなどがテクノ・ポップとして流行ったんですが、今やそれも過去の懐しさみたいなものでとらえられていると思うんです。一般のおばちゃんから若者まであらゆる意味で浸透していったと思うんですが、浸透の幅が広がった分だけ、逆に飽きられるのも早かったですね。これからのテクノ・ポップ、テクノロジー・ミュージックを打出すには、過去のテクノ・ポップを越えないとだめだと思うんですが、そこら辺でのこれからの自分達の目指す方向とかはどうですか?
I:テクノ・ポップに関しては、僕もある程度聴いてきたし、一年くらい前までかなり興味もあったんですが、結局僕らがやりたいことはコンピューターなんか使って安易にできるシンセサイザー・ミュージックじゃなくて、その次に来る、もっとアナログ的なものです。デジタルなものを使ってるんですが、例えばドラムもコンピューター・ドラムを使っていても他の楽器は人間的なものというか。

R:ある意味で手仕事の再発見というか。
I:だから機械でつくったドラムの音も一度人間の手にもどすというか、そういう事全部やってるので、コンピューターをはじくとできるようなテクノ・ポップから脱却しようというか、はじめからそれを目的にはしていなかったんですけど結果的にその次にくるようなスタイルを目指すというか……。

R:現在においてはクラフトワークなど過去のバンドのように思われてますが、クラフトワークが日本のロック、世界中のロックに与えた影響は計り知れないものがあると思うんですね。ある意味で徹底してデジタルやメカニックであることによって、逆に人間臭さが感じられると思うのですが。
I:結局それは逆説的なやり方で、そういうものに関してはクラフトワークのオリジナルなもので、それをやる必要はないんじゃないかと、あるいはそれに関しては細野さんがやってくれているし、僕らは彼らのやり方は尊敬するし、僕らなりのオリジナリティが必要だったからとにかくインテリアをはじめるにあたって他のグループの出している音とか観察しなかったもんですから。クラフトワークは比較的スタイリストでしたね。コンセプチュアルなもの、前もって決められたものから抜け出したかったので、僕らは録音にあたっても、スタジオの中でのインプロバイズという感じでした。

R:あらかじめ構築され、つくられた音楽じゃなくてスタジオの中に入ることによって新 たな音を直感的に生み出してゆくわけですね。
I:だからそういう意味のものが多かったですね。スタジオの中でも自由にやらせてもらったんですが、先程もいったように、機械のリズムを使っている部分でも音が生理的に響かなければインプロバイズ持っていくという形です。

R:80年代はあらゆるものを統合した形での新たな音楽がロックであると思うんです。グラフィックと音楽との関係みたいなものはどうですか?
I:グラフィック・デザインということに関して僕はブラジルにいた時にやっていたんですが、その時にも音楽はやることにはやっていたんですが、もっぱら学生として居たんですが。元々油絵をやっていて、イラストみたいなものからグラフィックへと移っていったんですが、インテリアの方向は、僕のもっている経歴とはかかわらずに、ビジュアルな部分で音楽をやろうと思っているんですが。

R:具体的にはヴィデオや映像という……。
I:ですからその部分に関しては音がまずできたんで、それから延長していってヴィジュアルなものもつくっていこうと思ってるんですが、時間があれば一つの作品みたいなものを作っていこうと思うんですが、まだはっきりした予定なんか決っていないんですが。

R:ヒューマン・リーグなんかはグループの出発時からビジュアル担当をいれ、完全にヴィジュアルと音楽の融合を目指していたんですが、そういう風にどんどん入れていこうというものですね。
I:メンバーの1人がヴィジュアル担当ということはないんですけれども音楽をつくる大事な部分でメンバーの何人かがビジュアルを担当するということです。

R:イーノのオブスキュア・レーベル、アンビエント・レーベルにおける音楽はどういう風に思われますか。
I:一時すごく好きだったんです。のめりこんだんですが、やっぱり僕には一つの屈折感があって一つの季節が過ぎたというか。

R:意識して聴くんじゃなくて、無意識に部屋の中に流しておくほうが、ふっと自分の心にひっかかったりするような……。
I:そういう聴き方をしていたんですが、むしろそういうのよりも積極的に観衆に参加する方がね。

R:そうしますとオプスキュアやアンビエントは過去の形であるということですか。
I:過去というよりも僕個人としてはその時期から脱け出て、そこから受けたものはたくさんあるのですが、僕はむしろイーノよりもスティーヴ・ライヒであるとか、ホルガー・シューカイとか、積極的なものが好きです。細野さんは僕らのことを環境破壊音楽だというのですが。

R:そうですね。イーノの音楽はやさしく包括してくれるが、破壊意識はないですね。そういう意味ではシューカイは包括するだけでなく、中枢神経を刺激して、異化作用を起させるところがありますね。インテリアの方向がこれからの中心ですね。
I:僕らがその中心になるかどうかは別にして、音楽に対してもっと積極的な方向性を見つけたいという事ですね。

R:今度出るアルバムについて聴かせてもらえませんか。
I:つい最近レコーディングが終了し、レコード・タイトルは特になく「インテリア」です。10月の21日発売されます。

R:日本人は新しもの好きでありながら深いところまで聴いてくれないような所があるでしょう。その辺で自分たちの方向をうち出すのにどういう風にもっとポップな展開をされるわけですか?
I:その事に関して今は暗中模索という感じなんですよね。僕ら自身、日本に永い間いたわけでもなく、それぞれ他の地にかなり長い間いまして、僕はブラジルからアメリカ、アメリカの中でも動き回っていましたし、日向くんはロンドンからアメリカとね。

R:みなさん日本以外の地で勉強し、行動していた人達が不思議な磁力によって集まってきたという感じがするんですが。
I:そうですね。それがもしレコードの中から聞き取れていただければ……。そういう意味では中間音楽というか、色々な音楽の間にあるというか、ジャズ、ロック、環境音楽であるカテゴライズされている音楽をまわりにおけるように、色々な音楽から影響をうけているので、これといって決められないのですがね。中間音楽というパターンじゃないですけど、そういう名前で呼んだら一番わかりやすいんじゃないかな。結局、日本の今までなかったようなもので、どんな形でいくか僕ら自身もわからないんですよね。とりあえずライブのバンドであるというか。

R:最後にインテリアについて、言っておきたいことがありましたらどうぞ。
I:名前に関しても日本語的な語感から室内音楽であるとかといった意味でとられても、それは受け手の方にまかせてしまうというのが多いのですが、僕らとしては作った作品に対して解説とか思い入れをしたりするというのは全くなくて、音がでている時点から受け手にまかせてしまうみたいなものです。

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