第15回 夏目漱石『夢十夜』



 ■放送日時:'94年8月16日 (火) 24:35

 ■文學ノ予告人:赤座美代子

 ■Cast:
自分:真島啓
庄太郎:吉武英樹
崖の女:後藤久美
若い母:合崎由岐
爺さん:小西祟之
侍:小島忍
女:宝生舞


 ■予告編でのキャッチコピー:
恋はあまりにも、永遠だった。
文学史上、不滅の夢語り。

 名科白集
日が出るでしょう、それから日が沈むでしょう。それから又出るでしょう。そうして沈むでしょう。

赤い日が東から西へ、東から西へと落ちていくうちに----あなた、待っていられますか。

百年待っていて下さい。きっと逢いに来ますから。

お前は侍である。侍なら悟れぬ筈はなかろうと和尚が云った。

そう何日 (いつ) までも悟れぬ所を以て見ると、お前は侍ではあるまいと言った。

人間の屑じゃと言った。

雨は最先 (さっき) から降っている。路はだんだん暗くなる。

只背中に小さい小僧が食付いていて、その小僧が自分の過去、現在、未来を悉く照して、寸分の事実も洩らさない鏡の様に光っている。

しかもそれが自分の子である。自分は堪らなくなった。

母は毎日三つになる子供に「御父様は」と聞いている。子供は何とも云わなかった。

しばらくしてから「あっち」と答えるようになった。母が「何日御帰り」と聞いてもやはり「あっち」と答える様になった。

その時は母も笑った。

 名場面
◆第一夜。
◆第三夜。

 登場人物ノ紹介
・自分。
 夢は、全てこの男が見たもの。年齢、職業不詳。おそらく漱石自身である。 ▼女に騙され子供に脅され、しまいには投身自殺までする。 ▼とは言っても、すべては夢の中の出来事である。

・女。
 潤いのある大きな黒い瞳を持つ。突然、自分の目の前で死ぬ。 ▼死の直前に、死んだら墓の傍で百年待てと、無茶を言う。

・侍。
 和尚に、早く悟りをひらけ、武士じゃろう、と苛められる。 ▼悟りを得て、和尚を殺す決心をする。

・子供。
 自分の子。6歳。何時の間にか目が潰れて盲目である。 ▼言葉つきはまるで大人。文化5年辰年に、自分に殺されたと言う。

・若い母。
 戦に出て行った夫の無事を祈って、お百度を踏む。 ▼だが、その時すでに夫は死んでいた。

・庄太郎。
 町内一の美男子。パナマ帽を被り、往来の女の顔を眺めるのが道楽。 ▼身分ある立派な女にひかれて、山へ連れていかれる。

・崖の女。
 庄太郎を誘って、電車で山へ行く。崖から飛び下りるよう命令する。 ▼飛び降りなければ、庄太郎の嫌いな豚が舐めると脅す。

 作品ノ解説
・夢十夜。
 明治41年、東西両朝日新聞に連載される。 ▼この後に続くのが「三四郎」であった。 ▼「三四郎」も汽車の中でのまどろみから 始まるように、夢は漱石文学に欠かせないモチーフである。 ▼漱石の夢への関心は、ロンドン留学時代から強かったという。 ▼「夢」をめぐっては、現在でも研究者たちの議論が絶えない。

 ■解説の先生:
「解説の先生」は以前「三四郎」の時にも解説した先生。例によって畳語のオンパレードで「パナパナ (注:パナマ帽) かぶって、女と山山、行く行く」には笑ってしまった。
 ■今週ノ問題:
夏目漱石「夢十夜」ノ第一夜本文ハ何文字アルカ? (注:ただしルビは除くこと)
 ■使用された音楽:
使用された場面 予告編
アーティスト dip in the pool
曲名 「707」
収録アルバム CD『Aurorae (オーロリー)』
メーカー・型番 イーストウェスト・ジャパン /Moon [AMCM-4096]

予告編・選曲リスト協力:片岡K事ム所

 ■所感・その他
 おなじみの「恋はあまりにも・・」が『夢十夜』でも出るとは思わなかった。ちょっと無理があるような気がするのだが。
 この回から「名場面」での字幕のフォントが変わる。丸ゴシックのイタリックから、ペン字のような字になる。
 「私」役の真島啓は、『美徳のよろめき』での水島かおりとともに、ジーワン制作の「コレージュ・ダムール〜恋の学校」にも「専任講師」としてちょくちょく出ていた。


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