第18回 森鴎外『青年』



 ■放送日時:'94年9月6日24:35

 ■文學ノ予告人:山口美也子
 ■Cast:
純一:清水邦彦
坂井未亡人:柾木良子
大村:吉武英樹
岡村:小西祟之
婆さん:松浪志保
お雪:井出薫
 ■予告編でのキャッチコピー:
恋はあまりにも、無残だった。
日本文学史上最高の青春教養小説!!

 名科白集
とにかく、君、ライフとアアトが別々になっている奴はだめだよ。

人間はいろいろなものに縛られているから、自分で自分をまで縛らなくても好いじゃないか。

そんならどうしたら好いか。生きる。生活する。
答は簡単である。しかしその内容は簡単どころではない。

人間は皆地獄を買うのかね。

活字は自由でも、思想は自由でないからね。

ああ、しかしなんと思って見ても寂しいことは寂しい。どうも自分の身の周囲に空虚が出来て来るような気がしてならない。

好いわ。この寂しさの中から作品が生れないにも限らない。

男子は生理上に、女子よりも貞操が保ちにくく出来ているだけは、事実らしいのだね。

しかし保つことが不可能でもなければ、保つのが有害でも無論ないということだ。

ご相談とあれば、僕は保つ方を賛成するね。

 名場面
◆ 有楽座で幕間に純一が坂井未亡人と会話を交わす場面。 (新潮文庫 p61〜76)
◆ 下宿先で純一がお雪と初めて出会う場面。 (p26〜30)

 登場人物ノ紹介
・純一。
 小泉純一は、Y県の資産家の息子。中学卒業後作家を目指し上京する。 ▼色白で美青年。女性たちが放っておかない。 ▼郷里にいた頃からフランス語の小説を乱読する仏文かぶれ。 ▼芝居を見に出掛けた有楽座で坂井未亡人と出会い「知る人」となる。 ▼しかし恋愛感情のない不毛の性体験に苦しむ。

・坂井未亡人。
 坂井れい子の夫は、父親ほど年の離れた法学者だった。 ▼夫の残した巨額の遺産で優雅に暮らしている。 ▼「謎の目」で童貞青年・純一を誘う。 ▼しかし未亡人にとって純一は性欲処理の対象に過ぎない。 ▼アバンチュールの相手は純一でなくても良かった。

・お雪。
 純一の下宿の近所に住む娘。父は銀行頭取という裕福な家である。 ▼お雪は純一にほのかな恋心を抱いている。 ▼しかし純一は坂井未亡人との情事で頭がいっぱいであった。

・大村。
 純一が青年倶楽部で知り合う医者を目指す青年。 ▼体格が立派だが文学好きで、純一の良き友となる。

・岡村。
 四十を越した名のある画家。坂井未亡人の恋人である。 ▼未亡人と箱根に旅行し、後を追ってきた純一と対面する。

 作品ノ解説
・青年。
 明治43年「スバル」に連載。日露戦争後、鴎外が書いた最初の長編。 ▼彼がこの作品を書くのに最も刺激を受けたのは漱石の「三四郎」。 ▼「三四郎」とは違った味を出そうと、さまざまな工夫をしている。 ▼例えば漱石の個人主義を越える、利他的個人主義の主張など。 ▼しかし何よりユニークなのは、当時の有名人が総出演していること。 ▼夏目漱石はもちろん、徳富廬花や鴎外自身もモデルとなっている。 ▼主人公・純一は、「スバル」の編集人だった石川啄木だったという。

 ■解説の先生:
 「解説の先生」は『』のときに出た、英語チャンポンの先生。今回はフランス語と九州弁も加えてチャンポン。「お雪」はもちろん「スノー」だが、「大村」が「ビッグ・ビレッジ」、坂井未亡人にいたっては、「シー・イズ・エロティック・マダーム、純一・イズ・オンリー・セックスマシーン。カモカモーン」などとハイテンションな解説(?)ぶりで、「解説の先生」自身が「もう何言ってるかわかんないね」と言う始末 (笑) 。

 ■今週ノ問題:
森鴎外「青年」ノ本文ノ中ニ、アルファベットハ何文字出テクルカ?
 ■使用された音楽:
使用された場面 予告編
アーティスト デイト・オブ・バース
曲名 「Fade To Grey」
収録アルバム 『あなただけ見えない・サウンドトラック』
メーカー・型番 KITTY RECORDS [KTCR-1151]

使用された場面 名場面 その1
アーティスト アンドレ・ギャニオン
曲名 「心の残像 Flashback」
収録アルバム 『イマージュ image』
メーカー・型番 Epic Sony / Epic acoustic [28・8P-5214]

使用された場面 名場面 その2
アーティスト アンドレ・ギャニオン
曲名 「シネマのように Comme dans un film」
収録アルバム 『イマージュ image』
メーカー・型番 Epic Sony / Epic acoustic [28・8P-5214]
 (現在はキティレコードから発売)

予告編・選曲リスト協力:
 ・片岡K事ム所
 ・clyde@alles.or.jp


 ■所感・その他
 このオンエア時、私の住んでいる市は1時間に160ミリ (大阪空港も翌日まで使用不能になった) という異常な集中豪雨に見舞われ、私の家も床下浸水したり、別のところにある地下駐車場に止めてあった車が水没して使用不能になったり、番組どころではなかった。
 このときのお雪役の井出薫は本当にかわいかった。あと「解説」がとにかく笑える。本当にモニターの前で腹を抱えて笑ってしまった。純一役の清水邦彦は予告編中一言しか発話しません (笑)。

 補足の情報。撮影は『雁』『斜陽』でも使われた都内の旧綿谷邸 (映画関係者の間では超有名な洋館だそうだ) で、撮影料は1時間あたり5万円する。


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