[17-08-1997]中国 #2 ‐ 昆明

朝,ホテルをチェックアウトし,歩いて1分で上海虹橋空港に到着,チェックインカウンタに並ぶ。現地人でも空の旅が出来る階級はやはり裕福そうで,荷物などを見る限り日本人とさほどかわらない。ちなみに,中国語でファーストクラスは「頭等艙」,ビジネスクラスは「公務艙」,エコノミークラスは「普通艙」と表記される。時間が来たので登机場(搭乗口)から7時50分発の上海航空SF451便に乗り込んだ。

離陸後,おきまりの女性服務員(キャビン・アテンダント)の種々の説明の後,彼女らが一礼すると機内から拍手が起こった。おそらく,客相手にお辞儀をするという習慣がない中国人にとっては感動に値するものなのだろう。しばらくするとピーナツやらお菓子やら妙な機内食が配給された。ワゴンのジュースは常温でそれに氷を入れるのだが,ミネラルウォーターでない現地の水・氷は腹をこわす恐れがあるので,ぬるいままコーラを飲んだ。いすのポケットにはごみが掃除されていないまま放置されており,機内ビデオは意味不明のスケボー少年のドラマや歌謡番組などと交互に人民解放軍のプロパガンダ映像を流していた。

11時前に昆明に到着して機外に出ると,上海とはうって変わって空気がひんやりとして心地よい。空港前にある雲南航空の售票所(切符売り場)で帰りの上海便のリコンファームを済ませ,中国民航のリムジンに乗る。途中で服務員に「どこで降りるのか」と聞かれ,茶花賓館に行こうと考えていたのでその横にある民航售票所といえば話が早いと思い「售票所」と紙に書く。ところが降ろされたのは市街地にある雲南航空の售票所の前だった。後日わかったのだが,民航が発票業務を雲南航空に委託したらしく,リムジンが間違っていたわけではなかった。

バスの車窓からみた昆明市内。

昆明の町は上海に比べて土っぽく,やはり省都とはいえ地方色が濃い。歩いている途中,ビル建築現場を見るとかなりの高層建築にもかかわらず足場はすべて竹で組んであり,ビル全体が竹のオブジェのように見えて面白かった。おそらく建築中に10人以上は不慮の死を遂げているだろう。

20分ばかりで茶花賓館に到着し,中にあるツーリストデスクでその日の夜に乗る大理行き寝台バスの予約をした後,昼食をとりに町に出た。昆明飯店の正面に「自助餐庁(バイキング)30元」と掲げられた清潔そうなレストラン「漢莎〓(くちへんに卑)酒坊」があったので,そこに入る。

そのレストランは地ビールを作っているのが売りらしい。さて,料理はというと,チキンライスかと思った赤い炒飯は実は唐辛子で赤く染まっているだけだったり,スープもうまいがやたら辛く,タイやら東南アジア料理みたいな味だった。もう1種類のスープは内蔵を裏ごししたようなこくがあってとろみのある妙なもので,ちょっと口に合わなかった。たくさん分量を食べられるものではなかったが,辛いスープや唐辛子ライスのような比較的おいしく口に合うものを集中的に食べて腹をふくらませた。

昼からは1時間弱ほどバスに乗って西山森林公園へと向かう。入園料には外国人料金が設定されているので,窓口では現地人を装って「両票(2枚)」と言って現地人料金分の金を投げると,票(入場券)を投げ返してきた。成功だ。

左下が昆明湖畔。後ろに見えるのが龍門。左下の4階建てくらいの建物が小さくみえるので,その高さがうかがいしれる。

ここでは絶壁にへばりついた,人が1人通れる細い道を通って眼下に昆明湖の絶景を眺めることができる。狭くて急な石段を上がっていくと,コンロだけの小さな露店で揚げ菓子を売っていたり,民族衣装を着させて写真を撮らせたりと,なかなか商売熱心だ。途中,「登龍門」の語源になったとも言われる龍門の石窟に立ち寄る。

断崖を掘削して造られた道教石窟の入口にある龍門。

出口を出て,50元もする「超高級リフト」(龍門索道)でバスのりばまで降り,バスで再び昆明市内に帰った。急な坂を荷物を持って歩いて喉が渇いていたので,「雪碧(スプライト)」の500mlペットボトルを買い,一気に飲む。ついでに夜行バスで不自由しないようにミネラルウォーターも2本買っておいた。

夜行バスの発車時間まであまり余裕がないので,夕食はバスが発車する茶花賓館(Camellia Hotel)でとることにした。レストランは普通の支那料理で,青島ビールをやりながら昆明名物の米線(みんせん。太いビーフンというか,米で作ったうどんのようなもの。だしは汁そばより淡泊),青椒肉絲や野菜炒め,冬虫夏草スープなどを平らげた。味つけは少し辛いもののおいしい。

ゆっくりしているうちにバスの発車時刻が迫ってくるのであわててレストランを出て,ロビーに行く。しかし,ホテルの前にバスが着いているようすはなく,訝しがっていると,案内人が現れ誘導を始めたのでついていく。200mほど離れた駐車場に数台寝台バスが停車しており,その1台に乗り込んだ。車内は現地人だけでなく欧米人もいる。2段の寝台は1つのベッドにつき2人で,蒲団も衛生的とは言いがたい。さらに,ベッドの長さが少し短いので足を曲げねばならないのも不快だった。

発車して30分くらい走ったところでバスが止まった。あたりは真っ暗で,なにも見えない。どうやらトイレ休憩らしいので,一応小用をすまそうと思い車外に出ると,乗務員に「そっちはダメだよ」(推測)と言われた。よく見るとバスと塀の間に女性たちが尻をつるりと出してかがんでいた。状況を把握したので男性が壁に向かって立っている反対側に行き,用を足した。寝台バスは,窓から隙間風が入ってきて寒く,道も悪路で寝心地も悪かった。