国立劇場小劇場に文楽を観劇に行ったときのこと。開演前にトイレに向かうと,前にかなり高齢のご老人がいた。なんか見覚えのある人だなと思ったら日本国籍を取得したドナルド・キーン氏だった。なるほど,文楽についてもいろいろ言及されているから,住太夫の義太夫を聞きにみえたに違いない。
それはさておき,キーン氏が日本に帰化する際,対外的な雅号を「鬼怒鳴門」と決めたのはちょっとどうなんだろう。日本語・日本文学に精通した氏は三島由紀夫とも交流が深く,書簡のやり取りなどでこのが雅号を使っていたようだ。トイレに付き添いにきていたお弟子さんらしき人たちは「先生,その雅号はヤンキーっぽくみえますよ」とちゃんと意見したのかなあ,と思ったけど,日本人の心情の根底にヤンキー気質が流れているという指摘もあるし,そこまで計算に入れた上なのかしらんとも考えてみるすしやの段。