この日も朝食はホテルのビュフェ。前回宿泊時同様,蝦夷鹿のハムやら地産地消のメニューがあり,ちゃんとオムレツもその場で焼いてくれるので,朝から食が進む。朝食後,あたふたと身繕いをし,所用先に出向く。
一仕事が終わり,タクシーで駅に向かう。旭川空港はアウトバウンド便の時間が悪いうえに競争が乏しく,列車に乗って新千歳空港経由の方が安くて早く戻ることができるという妙な逆転現象が起きているので,いったん札幌に行くことにする。うまい具合に特急スーパーカムイと接続がとれるので,あわてて売店でビールを買い,列車に乗り込む。
(再掲)旭川を離れ,神居古潭あたりのトンネルがちのエリアを快調にとばしていると,甲高い警笛,異音とともに列車がトンネルの中に頭を突っ込んで急停車した。冬場は高速走行中に電車が雪の塊をはね飛ばしたりすることが多いので,そのたぐいかと思っていると「ただいま,鹿と衝突したため,安全を確認しております」と車内アナウンスが流れ,車掌がばたばたと運転席に向かっていく。
周囲はトンネルが続く辺鄙なところでもあり,半分程度も埋まっていない車内はなんとなく不安な空気につつまれていた。10分ほど経ったころに「車両の安全を確認し,衝突した鹿を線路の外で処理しましたので発車します」とのアナウンスが流れると,「処理って…」というささやき声が聞こえ,さらに剣呑な空気が動き出した列車のなかに漂う。
トンネルを抜けると車窓は雪景色,のはずが窓ガラスには一面べっとり血飛沫が。どうやら鹿をはねたのではなく轢いたようだ。乗客の中には無言で反対側の座席に移る人もいた。(ここまで再掲)
結局,15分ほど遅れて札幌に到着。反対側のホームに回って見てみると,ステンレスの車体には大きく赤いペイントが飛び散っていた。
新千歳空港に着き,ゆっくり食事をとるには少し時間が足りないので,やや疲れたこともありラウンジに腰を下ろしぼんやりする。休憩後,弁当を買って保安検査場を通過,売店で缶ビールを買おうとすると「紙コップに注ぐ生ビールしかありません」と無情の一言。検査場の内側はどの売店も缶ビールは売っていないらしい。けんかをふっかけているとしか思えず,腹立たしいが,売っていないものはしょうがない。搭乗が始まったので,しおしおと飛行機に乗る。
帰りの座席はいつものクラスJ。クラスJでは缶ビールを機内販売していたような記憶もあるので,そこに一縷の望みをつないだものの案の定ビールは置いておらず,弁当を食べた後ふてくされて寝た。