西海岸〜欧州〜東海岸と迷走したヴィレッジ・ピープル

1970年代末のディスコブームに乗り,「Y.M.C.A.」や「In the Navy」など世界的に大ヒットを飛ばしたVillage People(ヴィレッジ・ピープル)。ディスコブームが終焉を迎えたあと,てっきり自然解散をしていたものと筆者は思っていたが,ニューウェイブ/ニューロマンティック路線に転向,1981年にアルバム『Renaissance』をリリースしていた。

ホモのイメージを前面に押し出し,メンバの扮装もマッチョなコスプレだったディスコ時代と打って変わって,イギリスに河岸を変えてカルチャークラブあたりゲイカルチャーを意識した白塗りにつけぼくろとがらりとイメージチェンジを図る(上記リンク先画像参照)。とはいえ,胸毛をさらけだしたり,髭ぼうぼうだったりと“ヴィレッジ臭さ”が抜け切れていないところがご愛敬。

当時,シングルカットされた「Do You Wanna Spend the Night」の日本版にある解説をみてみよう。

「常に時代の最先端にあって,流行を作り続けてきた男達が,今俺達に新たな提案を掲げた… それは,男のルネッサンス。男は男であり続け,しかも限りなく美しくあれ。ヴィレッジ・ピープルはクリスタルな女たちよりも,もっと先へ行ってしまった。アメリカン・ポップをリードしながら,どこかしらユーロピアン・フレーバーを漂わす音作り。(中略)ヴィレッジ・ピープルからの提案,君はどうする?」

「どうする?」と訊かれても,いやあれを美しいというにはかなり無理がありますよ,提案と言われましてもねえ——としか答えようがないが,このとってつけた感じの解説から,マッチョ+ディスコから一転ニューロマ風味のニューウェーブへと急激なイメージチェンジを図ったヴィレッジ・ピープルに対するレコード会社(と周囲)の苦慮ぶりがうかがえる。セールス面でも振るわず,ずっと50位以上をキープしてきたビルボードチャートも最高138位にとどまる結果となった。

1982年発売の次のアルバム『Fox on the Box』(アメリカでは『In the Street』としてリリース)では「Play Bach」でヒップホップを導入するなどストリート系の要素をプラスしつつ再びマッチョ+ディスコの西海岸路線に軌道修正。ヒットの夢よ再び,とばかりにメインボーカルもディスコ時代のVictor Willisが復帰。ところがこれも時代との乖離が原因なのかセールス面ではさらに苦戦,チャートにランクインすらしなくなった。

西海岸,欧州路線でだめなら次は東海岸だ,とばかりに「NewYork city」を収録したラストアルバム『Sex over the phone』を1985年にリリースする。今まで“地方の州警察”といった趣だったコップ(警官)の衣装も“ニューヨーク市警察”っぽい衣装にチェンジするなど都会派の雰囲気を演出。トラックもホール&オーツを意識したかのようなシティポップやハイエナジーっぽいサウンドにシフトするが,ここでもやっぱりサビのコーラスでは相変わらずのヴィレッジ節がほほえましい。

アメリカでは目立ったヒットこそなかったものの,イギリスではチャートインし,ドイツではテレビ出演も果たすなど欧州を中心に一定の盛り上がりはあったようだ。「海軍やYMCAでサカってると流行りのエイズになるからテレフォンセックスでセーフティ!」ということなんだろうか,テレフォンセックスを題材に取ったアルバム表題曲「Sex over the phone」(邦題「恋のバッキンテレフォン」)のPVはテレクラやインターネット時代の出会い系を予言したかのよう。

このようにディスコブームが去ってからのヴィレッジ・ピープルの迷走ぶりは目を覆うばかりだが,中には面白い曲もあり,プロデューサーのジャック・モラリはその時々のトレンドを注入しようとしたのだろう。『Renaissance』でのヴィレッジ・ピープルの紫色のロゴはプリンスの『Purple Rain』のジャケットに受け継がれ,テレフォンセックスを題材に取ったアルバム表題曲「Sex over the phone」(邦題「恋のバッキンテレフォン」)に挿入される電話のプッシュトーンはKraftwerkの「Der Telefon-Anruf」が収録された『Electric Café』のリリースより1年早い。後世から見ると迷走期のヴィレッジ・ピープルは時代を先取りしていたようにも思えるが,最盛期のイメージがあまりに強すぎて,最後まで色物扱いだったのが気の毒だった。