フランスAntenne2のニュース(1987-1991)のメモ

フランスのテレビニュースは,TF1,France2とも昼のニュースjournal de 13 heures(JT13H*)が13時に,夜のメインニュースjournal de 20 heures(JT20H*)が20時にそれぞれオンエアされる。朝は情報番組のなかで30分おきに数回,深夜は24時ごろにそれぞれ短いニュースがオンエアされる。

*JT:Journal télévisé,つまりテレビニュース。

ちなみに,イギリス・BBCは昼のニュースが13時,夜のメインニュースは21時放送となっている。

France2はフランス政府100%出資のFrance Télévisionsが運営するテレビ子会社で,かつての局名はAntenne2(A2,アンテンヌ2)だったが1992年に組織改編される際に名称も改められた。ここではA2の1987年から1991年ごろまでのニュース番組についてつらつら書いてみる。

前史

1970年代後半から1980年代前半にかけてPatrick POIVRE D’ARVOR(PPDA)がA2のJT20Hを担当していた。フランソワ・ミッテラン政権下でTF1が民営化された1987年,PPDAはA2からTF1へと移籍し,20Hを担当するようになった。

PPDA担当時のJT20H。サイケなアニメーションのオープニング。
ちなみに,PPDAは後年A2やTF1のニュース番組のアンカーだったClaire CHAZALと関係を持ち,2人の間には私生児がいると話題になった。

1987-1989

A2はTF1に対抗すべく,Henri SANNIERを20Hの担当に据え,ニュース番組のスタジオセットとオープニングを統一感のある斬新なものに一新。なお,13HはWilliam LEYMERGIEとPatricia CHARNELETのコンビが続投している。

1987-1989 メディアアーティストのDavid NILESが手掛けたオープニングはすべてのニュース番組で共通。サブリミナル映像が含まれると指摘されたバージョン。CGをDavid NilesがYouTubeにアップロードしている(https://www.youtube.com/watch?v=zGIFKzZYKUo)。

1988年,「オープニングCGにおいて,A2ロゴの“2”の部分にミッテラン大統領の顔が1コマ映り込むサブリミナル効果が施されている」と報じられ,大問題となる。これを受け,ロゴの表面を平滑化する処理をほどこしたCGに差し替えられた。

この間,テロップシステムの更新や,20Hの担当がChristine OCKRENTとHervé CLAUDEが週替わりの二頭体制になるなどの変化がみられている。なお,アンカーの詳細はListe des présentateurs du Journal de 20 heures de France 2Liste des présentateurs du Journal de 13 heures de France 2を参照。

ロゴのCGが修正された後のオープニング。テロップシステムも更新されている。担当はPhilippe LEFAIT。

1989-1991

音楽はそのままでオープニングCGをリニューアルするとともにスタジオセットも改修。リニューアル後,すぐに“le journal”の筆記体ロゴが白く縁取られる手直しが入る。理由は不明だが,視認性の向上ではないかと推察。

こちらはChristine OCKRENTが担当している20Hの映像。手直し前のロゴは,深夜のフラッシュニュースの動画https://www.youtube.com/watch?v=XBfmvZUGCf4でみることができる。

その他

Henri SANNIER担当番組での演出

1987年のリニューアル以降,番組冒頭に立ってポケットに手を入れたHenri SANNIERがコメントしてからオープニングが始まるなど,彼の担当番組を中心に演出面でも新規性を打ち出した。もっとも,日本のニュース番組のように,BGMに派手な音楽を流したりするわけではなく,スタジオの照明やカメラワーク,合成背景のデザインなどに工夫がみられた。

1990年にHenri SANNIERは13Hの担当となり,またしても冒頭はセットに立ったまま株価や天気を紹介,ニュースを伝える際はブルーバックの背景にセットを合成するなどの演出を施した。こういったこじゃれた演出は1991年ごろには行われなくなった。

05:30くらいから13Hと似た感じの演出の深夜ニュース。

エンディングあれこれ

タイトル音楽が鳴り続け,終了しないのでデスクの下に隠れるHervé CLAUDE。現地のNG特集のような番組でも取り上げられていたこの映像は,INA(Institut national de l’audiovisuel,フランス国立視聴覚研究所)がアップロードしており,こんなものまで収集・公開するフランスのセンスは好きだ。

新年の放送(1er janvier 1988)でシャンパンで乾杯するPatricia CHARNELET(4:55ごろ)。アンカーが酒を呑むニュース番組もそうそうなかろうかと。そういえば,『ニュースステーション』の最終回で久米宏がビールを呑んでいたのを思い出す。

結構ゆるい時間管理

上記に貼った動画でもみられるが,番組の開始が20Hでも「19:59:38」「20:00:13」などとかならずしも正時きっかりに始まるわけではない。またオープニングのCGも途中から始まったりすることもある。このあたりがマスタ送出システムで秒単位で管理されている日本のテレビ番組を見慣れていると違和感を感じるところ。