[24-08-1997]中国 #9 ‐ 上海

朝,黄浦公園を散歩しようと東風飯店を出て中山東路の西側(公園の反対側)の歩道を北に向かって歩いている途中,包子屋が2軒並んでいた。1軒のほうからとても美味しそうなにおいがしたのでその店で「朝食の前にかるくおやつでも」と2つ包子を買った。地下道を通って中山東路をくぐり,公園でためしに1つ食べてみたところかなり美味しい。急いで引き返し,さらに買い増しして朝食の代わりにすることにした。1つ5角〜1.5元くらいだったように思う。2軒の店をよく観察すると,やはり美味しい店のほうがよく繁盛していた。

ホテルに戻り,チェックアウトを済ませる。午後便に乗るので,午前中は南京路でぶらぶら買い物やら散歩でもすることにしていた。碧山老師と大きな「百貨大楼」に向かい,そこのコインロッカーに荷物を預けた。上海ではコインロッカーはまったく見かけないので,おそらく設置してあるのはここぐらいなものだろう。日本のコインロッカーとは違って鍵がなく,荷物を入れコインを投入してボタンを押すと,7桁の「密碼」(暗証番号)が記されたレシートのような紙片が排出される。荷物を取り出すときは暗証番号をテンキーで入力すると扉が開く仕組みとなっている。鍵そのものが盗まれたり,鍵を偽造して他人の荷物を盗む輩を警戒してのことだろう。

友人と11時ごろにここで再び落ち合うことを決め,ばらばらの行動をとることにした。日本でもあまり見かけることのない三菱電機が開発した曲線のついたエスカレーターを下り,街路に出てぶらぶらと歩く。土産物に現地のたばこやCDを買ったりした。中でもおもしろかったのが,上海市第一医葯商店で,ここは漢方薬から西洋医学,はたまた医療道具や健康用品まであらゆるものがそろっている「健康のデパート」みたいなところだ。ありふれたモノではない気の利いた土産物をと思い,ここで人間の頭の模型に鍼灸のつぼと経絡を記してある「頭針模型」とそれの耳版である「十耳模」を買った。

この上海市第一医葯商店は昔ながらの代金の支払い方で,売り場で購入する物品とその数量を「発票」してもらい,それを支払いカウンタに持っていく。代金を支払うとそれに領収印を押されるので,再び販売カウンタに持っていくと商品が手渡される。さて,ついでに睡眠薬でも買おうと筆談で求めるが,売ってくれない。処方箋が必要なのか,販売していないのかよくわからないが,ひとまずあきらめて,店を変えて普通の薬局で「我欠眠。求薬為快眠」と紙に書いてみせると,フランス製のアモバンを売ってくれた。価格は2つ買って70元と高額だが,日本での手間を思えば安いものだ。他には書店や百貨店などをひやかした。百貨店では中文表記のWindows95がインストールされたパソコンが展示してあった。

買い物やぶらぶら歩きを終え,待ち合わせ場所である件のコインロッカーの前に到着した。友人と落ち合い,さて荷物を取り出そう,と7桁の「密碼」を入力するが,なぜか扉が開かない。何度も暗証番号を入力するが開かない。しからば,ともう一度硬貨をいれて新しい暗証番号を取得し,再び新しい暗証番号を入力してもやっぱり開かない。このままいくと下手をすれば飛行機に乗り遅れてしまうのでは,という不安が頭をよぎり,友人と「もし乗り遅れそうになるようだったら,放っておいて先に空港に行く」ことを打ち合わせる。

通りがかった警備員に筆談で故障である旨を伝えると,警備員もそのコインロッカーのことは管轄外であるらしく,どこかに消えたと思ったら鍵束を持ったデパートの女性服務員をつれて来てくれた。女性服務員が鍵を回すと見事にロッカーが開いた。どうも荷物を詰め込みすぎたらしい。日本のコインロッカーだと,引き手を持って扉を引っ張って開くのだが,このコインロッカーは自動で開くようになっていて引き手がなく,こうした場合外からの開けようがないらしい。礼を言って百貨店を出て,早足でリムジン乗り場へ向かった。

上海虹橋空港に到着し,搭乗手続きをする。それにしても空港利用税90元は法外に高い。手続終了後は時間が余ったので土産物店などを冷やかすが,商品自体は大したことはない割に市中に比べべらぼうに高い。手持ちの人民元をすべて使い切ろうとするが,うまく細かい金が使えずほんの少し余ってしまった。時間になり日本航空JL794便に搭乗し,帰国の途につく。日本に到着してまず最初に感じたのは「なんか空気がヌルいなあ」。発展途上の中国人民のような活気はないし,いつモノを盗まれるかわからないといった緊迫感もない。

協力:碧山老師。
Special Thanks: KATSURAGI, Ichiro(氏の旅行記を参考にして旅行のプランをたてました)。