仮に,メーカからキャリアが買い取った端末に対して適正な利潤を乗せた本来の価格を60,000円,店頭の小売価格は0円とする。
1. 従来のキャリア:端末販売価格0円=端末代金60,000円-販売奨励金(インセンティブ)60,000円
‐ユーザは端末に1円も払わない。
‐キャリアの支払うコストは端末販売時に60,000円。
2. ソフトバンクモバイル(SBM)の“端末料金0円”:端末販売価格60,000円=端末代金60,000円-販売奨励金(インセンティブ)0円
ただし,ユーザは一括で60,000円支払うのではなく,24カ月の分割払いにさせられる。ユーザは1カ月あたり2,500円を2年間支払わなければならないが,SBMが請求から2,500円分毎月割り引くことによってユーザの負担を軽減するスキーム。
‐ユーザの端末への実質支払額は0円。
‐SBMの支払うコストは24カ月にわたって60,000円。同時に60,000円分の割賦債権を取得する。
キャリアにかかるコストを単純に比較すると,1.が60,000円に対して,SBMの負担も60,000円。一見同じに見えるが,1.は一度に60,000円を支払うのに対し,2.は24カ月にわたって支払うユーザンスがあるから等価とはいえない。支払いはできるだけ先に延ばすほうが期限の利益が得られて有利なのはファイナンスの基本。
一方,2.でSMBは「ユーザに60,000円を24カ月の分割払いにさせている」ので,当然60,000円分の割賦債権を手に入れることになる(SBMの分割払いは信販会社などを介在させない自社割賦方式なので割賦債権は手元に残る)。この債権はABSによる証券化などで流動化できるので,ウマく流動化させることができれば60,000円全部とはいわないまでも,キャッシュに換えられる。月々のキャッシュフローがきちんと入ってきて,リスクが比較的低い債権なので,流動化しやすいかと思われる(cf. ヤフーBBのレンタルモデムの証券化)。
つまり,「払わなければならないコストはできるだけ先送りして,将来入ってくるインカムは先取りしてキャッシュに換えてしまう」というまことにSBMにとってはすばらしいビジネスモデル。でも自転車操業になる可能性はないのか?