黛敏郎,電子音楽

 筆者はエレクトロポップ,テクノ,エレクトロニカと電子音楽好きだが,一方でニュースやコマーシャルなどの商業音楽もけっこう好きだったりする。5秒から30秒程度の短い時間で,耳に残るキャッチーなメロディをつくるのは職業作曲家の独擅場だろう。下にも書いたたかしまあきひこ(高島明彦)のドリフターズ関連の音楽,「産経テレニュース」「スーパータイム」「ニュースレポート」などフジテレビのニュースのジングルは印象に残っている。今でも日曜日に「産経テレニュース」でブラスの不協和音を聞くと,「いかにもニュース番組」といった趣を受ける。

 不協和音とニュース番組といえば黛敏郎もはずせない。数年前までUHF局で流れていた「朝日フラッシュニュース」のファンファーレ,そして筆者が小学生の頃耳にしていた「NNNニュースのテーマ」が代表的だ(日本テレビのプロレス中継や野球中継のテーマも黛敏郎作曲)。特に後者はニュース番組用に5秒から20秒に尺が調整されているけれど,フルで演奏すると90秒ほどあり激しいティンパニ,ゆったりとした中間部から最後のメインメロディに駆け上っていくあたりが黛敏郎らしい。

 黛敏郎は言わずとしれたミュジーク・コンクレートや電子音楽の第一人者で,当時の作品を聞くと今聞いてもかなり新鮮。以前,科博で開催されてた「1970年 大阪万博の軌跡」に行ったとき,見たくてしょうがなかった太陽の塔の内部,生命の樹を再現するコーナーがあった。もちろん音楽は黛敏郎(交響曲「生命の讃歌」)。バーバリズムを思わせるティンパニの連打に岡本太郎デザインのサイケデリックなオブジェ。国費で前衛をやるたあたいしたもんだ。

 その黛敏郎の電子音楽は現在入手するのが容易ではなく,今夏「〈東京の夏〉音楽祭」で武満徹・諸井誠などと一緒に聞くことができるのはうれしい限りだが,ダムタイプなどの音楽を手がける池田亮司のインスタレーションが東京都現代美術館で展示されていたので,一足先に現在の電子音楽を聞いてきた。あいかわらず,高周波,パルス音とホワイトノイズをメインに構成され,京都で見た「OR」,初台のNTTインターコミュニケーションセンター(ICC)でのインスタレーション展示などダムタイプを思い出した。ダムタイプや池田亮司のCDはいろいろ持っているが,音響効果が計算された空間で聞くとまた違う。草月ホールで聞く黛敏郎の電子音楽は果たしてどのように聞こえるか。