ホール落語を聴く

 落語はたいてい浅草か末廣の定席に聴きに行くことが多いのだけれど,川柳川柳の「超特大ガーコン」を目当てにホールの高座に足を運んでみた。寄席では,トリ以外持ち時間が15分程度であるのに対して,独演会や一門会などのホール落語ではそれほど詰め込んでないことが多く,話をゆっくり聞くことができる。

 トップバッターの川柳の女流弟子はまだ二つ目だそうで,キンキンした声の質がちょっと苦手。ネタは新作で,ちょっと前半の無差別殺人うんぬんのくだりや,兵隊の言葉遣いなどのツメの甘さが気になる(★)。このあたりをもう少し詰めればおもしろい話になると思うのだけれど。個人的に意外な拾いものはゲストの林家たい平で,時間の関係でかなり端折ったにもかからわず,「湯屋番」は番台にのぼった若旦那の妄想の下りで笑わせてもらった。調べてみたら得意演目だそうで不勉強が恥ずかしい。マクラの「二代目林家泰葉」襲名というくすぐりもツボ。

 で,肝心の超特大ガーコンはというと,特大すぎて大戦前半・後半にかけてがやや散漫な印象。もっとも,全曲1番の歌詞をフルコーラスで歌うのだからしょうがないか。後半はいつもの通り絶好調で,最後にはのりのりのガーコンに。齢78ということもあり,ちょっと言葉が詰まったりするところが気がかりだったが,なかなかお元気。「そのうち戦争やるね,相手は北朝鮮だよ」に館内大爆笑。ぜひとも次は「ジャズ息子」を聞いてみたい。

 会場のホールの別フロアで鴻上尚史作・演出の「ハッシャ・バイ」を上演していて,「第三舞台かなつかしいなあ」と思いながらロビーを横切ると,大川隆法に似た下ぶくれの親父が立っていた。む,鴻上尚史本人ではないか。第三舞台の公演のときも観客に混じってロビーにいたり,手書きの「ごあいさつ」のコピーを配っていたのを思い出した。意外な人物といえばガーコンの後,三本〆に林家ペーが出てきたが,高座にピンクの鞄を置くのはマナーとしてどうなんだろう。ハネてからロビーに出てきた林家ペーは結構小さな人だった。

[★]「不幸な時代」という題のようだ。